あなたとは合わないと思っていたけれど
「紹介する、彼女が婚約者の西條香澄さんだ。会社の同慮で彼女は今本社で働いている」

 武琉の紹介を受けて香澄は丁寧にお辞儀をした。

「初めまして。武琉さんとお付き合いをさせていただいています西條香澄と申します。本日はお招きいただきありがとうございます」
 義家族の反応が不安だったが、頭を上げるのと同時に温かい声をかけられた。

「まあ、素敵なお嬢さんじゃない。武琉ったらこんな彼女がいるのにずっと黙っているんだから」

 義母がうれしそうな声を上げる。いつから付き合っているや馴れ初めなどは、いずれぼろが出ないように曖昧にすることにした。けれど同じ会社ということで、社内恋愛をしてきたんだと受け止められているようだった。

「よく来てくれたね。さあ座って」
「失礼します」

 緊張しながら腰を下ろすと、義父が香澄を見つめていることに気が付いた。

(ものすごく観察されてる)

 プレッシャーで手のひらに汗がにじみ出る。

「香澄さん、武琉は頑固で融通が利かないところがある。一度決めたら変えないし、仕事ばかりで家庭を顧みないかもしれない。妻になったら苦労をすると思う」

「仕事については同僚でもありますので理解しているつもりです。パイロットという厳しい職務に就く彼を支えられたらと思っています」

 なんとか絞り出した言葉を聞いた義父が頷く。
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