あなたとは合わないと思っていたけれど
「天谷家は広く事業を営んでいることもあり、人付き合いやしがらみが多い。不自由することもある。失礼だが一般家庭出資の香澄さんには重荷ではないか?」

 それは確かに荷が重いことだ。

 とくに人付き合いなんて、香澄が苦手とする筆頭。そのせいで一瞬返事が遅れてしまい義父の表情に影が浮かぶ。

(どうしよう)

 そう思った瞬間、武琉が口を開いた。

「彼女が重荷だと感じないように俺が守る」

 はっきりとした声音が、部屋に響いた。義父母が意外そうに目を見開く。

「武琉、そう簡単な話では……」
「俺は彼女以外考えられないんだ」

 真摯な表情で断言する横顔を見ていると、彼が本気で言っているようにすら見えて、香澄は思わずどきっとしてしまった。

(演技がうますぎるよ)

 エリートはなんでもこなすというのは本当だ。

 武琉の堂々とした宣言を受けた義父は、しばらく考え込んだ後、諦めたように頷いた。

「分かった。香澄さんを当家に歓迎するよ」

 義父は完全に納得したわけではないように見えた。それでも武琉が決心を変えないと察したのだろう。

 最終的には義父にもなんとか受け入れて貰えた。義兄とその家族も香澄がイメージしていた上流階級のプライドのようなものはなく気さくでとても話しやすかった。

 和気藹々とした会食が無事終わり香澄は肩を撫でおろした。
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