あなたとは合わないと思っていたけれど
 香澄は部屋の中でかなりの面積を占める巨大ビーズクッションに目を遣った。

 これは香澄が寛ぐのに欠かせないものだ。ただ自室に置くと床を占領してしまうし圧迫感がある。少し迷ったが香澄はそれをリビングに持って行った。

 高価そうなレザーのソファの隣の、空いているスペースにそっと置いてみる。テレビを見るのにちょうどいい角度だ。

「……やっぱりちょっと違和感があるかも」

 モデルルームのようなスタイリッシュな部屋に、突然生活感が滲みだしたというか。

 完璧だった調和が一気に乱れてしまった感じで気が引ける。

 でもここが一番適切な置き場だと、香澄は違和感を気にしないことにした。

 武琉は好きにしていいと言っていたし、家は寛ぐ場所というのが香澄のポリシーだ。気を使って我慢をしたらなんの為に契約結婚したのか分からない。

 もし武流に文句を言われたら、そのときどうするか考えればいい。

(シンプルなグレーのクッションだから大丈夫だと思いたい)

 買うとき本当は鮮やかなオレンジにしようか迷って結局無難なものを選んだのだった。当時はちょっと地味だったかと後悔したが、今となってばよかった。

 香澄は巨大クッションにゆっくり沈んだ。引っ越し作業で疲れていたからか、すごくほっとする。

 視線を上げると白い天井が視界に入った。

(今日からここで暮らすなんて、不思議な気分)
 慣れない場所に来て緊張している。でも同じくらい期待もある。

 当分の間ここで生活するのだから、早く慣れるようにしなくては。

 そんなことを考えている内に、引っ越しの疲れだろうか。気付けば眠りに落ちていた。

< 48 / 171 >

この作品をシェア

pagetop