あなたとは合わないと思っていたけれど
「いただきます」
香澄は綺麗な色の鮭の身をほぐした。身が熱くて柔らかい。
「美味しい~」
食事に満足すると幸せを感じる。独り身でも毎日は細やかな幸せに溢れている。
「でもさ、結婚はともかく恋愛はした方が毎日が楽しくなるかもよ? あ、シイタケ食べてね」
「うん」
菜恵は自分の器から飾り切りしてあるシイタケを取り出して、香澄の器に入れた。彼女はシイタケが苦手なので、たいてい香澄が引き受けている。代わりにイクラを少しお裾分けした。
「結婚は慎重になるけど、恋愛は気軽に始めたっていいんじゃない? もし合わないと思ったら別れたらいいしね。私はよほど嫌な相手じゃなかったらとりあえず付き合ってみるよ。付き合っていくうちによくなる場合もあるから」
「そうかもしれないけど、私は恋愛したいと思えないなあ……そんなパワーがないと言うか、家でのんびりしている方が幸せだよ」
居心地がいい家に香澄は心から満足している。下手に恋人をつくって癒しの時間を邪魔されたくない。
「香澄は引きこもり系おひとりさまってやつだね」
「うん。家でまったりだらだらできたら満足」
「香澄が満足ならそれもいいと思うけど、お母さんが許さなそうだよね。これからもっと強く結婚しろって迫られるかもしれないよ。それならやっぱり自分で相性が良さそうな人を探した方がましじゃない? 本当に気になる人いないの?」
「いないよそんな相手、知ってるでしょ?」