あなたとは合わないと思っていたけれど
 香澄はひと通りキャンドルのチェックを終えると、武琉に優し気な目を向けた。

「素敵なお土産をありがとうございます。大事に使わせてもらいますね」
「ああ」

 彼女なら本当に大切にしてくれそうだ。

 そんなことを考えていると、香澄がゆっくり腰を上げた。

「料理温め直してきます」
「ああ」

 武琉が頷くと、香澄は少しの間を置いてから「よかったら武琉さんもいかがですか?」と言った。

 まさか誘って貰えるとは思っていなかったので驚いた。彼女はふたりの間に明確に距離を置いていたし、武琉のことに関して一切口出ししてこなかったからだ。

 気遣いの誘いも初日だけ。そのとき武琉が断ったからか、以降の声かけは一度もなかった。

 香澄が武琉の返事を待っていた。その顔には自然で純粋な善意だけが浮かんでおり、 香澄を身近に感じた。

 もしかしたら彼女が少し酔っているからかもしれない。いつも以上に多弁だし、フレンドリーな態度なのは、気持ちが大きくなっているからなのだろう。

「それなら、少し頂こうかな」

「はい。飲み物はどうしますか? ワインを飲むならグラスをもってきますけど」
「明後日まで休みだから一杯だけ頂くよ」

 武琉は仕事柄あまり飲まない。フライトに影響しないように気を使っているため、断酒とまでは言わないが、どうしても必要なとき以外は遠ざけていた。しかし今日は香澄と一緒に飲みたいと思った。
< 63 / 171 >

この作品をシェア

pagetop