あなたとは合わないと思っていたけれど
 香澄は頷きキッチンに向かい、しばらくすると戻ってきた。

 ローテーブルの上には、湯気が立つビーフシチューと、鮮やかなサラダ、チーズのおつまみが並んだ。香澄が温め直したせいか、先ほどより更に美味しそうに見える。

「いただきます」

 武琉に続いて彼女もそう言い食事を始めた。

 武琉はビーフシチューを口に運び、次の瞬間目を丸くした。

「美味いな!」

 思わず声を上げてしまった。しかしそれくらい美味だと感じたのだ。

「えっ……ありがとう」

 香澄は戸惑いの表情を浮かべてから、苦笑いになった。

(この顔はお世辞だと思っているんだな)

「お世辞じゃない。本気で思ってる。こんな美味しい料理を食べたのは久しぶりだ」
「……いつも何食べてるんですか?」

 香澄がふっと笑って言ったので、武琉も目元をやわらげた。

「このシチューはね、赤味噌を入れてるんです。そうすると美味しいって友達から聞いて」
「友達って野崎さん?」
「そうです。彼女、グルメだから。ステイ先でもいろいろ食べ歩いてるんです。武琉さんはいかないんですか?」
「付き合いで有名店に行くこともあるけど、ひとりのときはホテルの近場で」
「もしかして適当に選んでるとか?」
「そう。でも今のところ失敗はしてないよ」
「それはかなりついてますよ。私なんて普段のランチでもメニュー選びで失敗して後悔することが多いのに……」
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