あなたとは合わないと思っていたけれど
 香澄とはあまり共通点がないはずなのに、今夜は会話が途切れない。

(人見知りで口数少な目かと思っていたが、結構話しやすいんだな)

 武琉は香澄を改まった気持ちで見つめた。小さな卵型の顔に整った顔立ち。どことなく品がある雰囲気。もし華やかに着飾ったら人々の目を引きそうだ。それなのに彼女は家に引きこもって、自分の生活を充実させることを好んでいる。

 もったいないと思った。香澄がその気になったら、もっと世界が広がるのに。

(でも彼女が今の生活に満足して幸せを感じているなら、それでいいのか?)

「どうしたんですか?」

 気づけば香澄が戸惑いの表情で武琉を見つめていた。

「え?」
「深刻そうな顔をしているように見えますけど」
「ああ……なんでもない」

 武琉は笑って誤魔化した。

「ところで、いつもはどんなふうに過ごしてるんだ? もちろん料理をつくって楽しむのは素晴らしいことだと思うけど」
「そのときどきで気が向いたことをしてますよ。今日は映画を見るつもりだったんです」
「映画?」

 香澄は壁のスクリーンに目を向けた。

「ここに来てから大画面で見られるようになったから、以前よりも頻繁に見てます」
「へえ……どんなジャンルが好み?」

 香澄のイメージは、ほのぼのした家族物や、明るい気持になるコメディだろうか。もしくはシリアスなミステリー。
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