あなたとは合わないと思っていたけれど
五章 幼馴染登場
四月になりASJにも新人が入社してきた。
本社ビルの廊下を、研修中の新人たちが移動している。
なんとなくその様子を眺めていた香澄の隣に、菜恵がやってきた。
「若者を見てると、新年度って感じがするよね」
菜恵は今日、その新人たちの教育担当として本社までやって来ている。
「うん。すごく前向きな空気を感じる。これからって希望に溢れてるよね。私たちも新人の頃はあんな風だったのかな」
入社して六年経った今、当時の気持ちを思い出すのは難しい。
「先輩たちから見たらそうだったんじゃない? 今となっては日々の多忙さですっかり枯れてるけど……でも香澄はなんだか若返った気がするよ。肌も艶々だし」
菜恵が香澄の顔をじっと見つめる。
「化粧品変えた?」
「うん。シリーズごと変えてみた」
武琉と契約結婚してから、家賃と生活費は彼が出してくれているので、香澄は以前よりも経済的余裕が生まれている。
そのため予算の問題で諦めていた、高品質基礎化粧品シリーズを手に入れることができたのだ。
「あ、前に欲しいって言ってたの?」
「そう。ボディクリームもそのラインで買ってみたの。お風呂上りにマッサージするとすごく癒されるんだ」
「よかったじゃない。天谷さんともうまくいってるの?」
菜恵が言っているうまくいっているは、契約結婚で問題が起きていないかの問いだ。香澄は迷わず頷いた。