あなたとは合わないと思っていたけれど
 不安もありながら決断した結婚だが、今のところ香澄の生活は格段に上昇していており、満足している。生活レベルは確実に上がった。

 武琉との関係も良好で、一度もトラブルは起きていない。

「順調だよ。仕事柄あまり顔を合わせる機会がないのもあるから」
「なるほど。彼は国際線も多いからね。機長への昇格のためには規定フライト時間をクリアする必要があるから忙しいか。会う機会が少ないなら気楽だね」
「うん」

 菜恵にはそう答えたが、香澄の心の中は少し違っていた。武琉が在宅してもそれほど気まずくない。むしろ意外と話しやすいのだ。

(結構気が合うのかもしれない)

 性格も趣向も全然違うが、不思議なことにかみ合う。武琉が合わせてくれているのかとも思ったが、そうでもないような気もする。

 断定するにはまだ彼のことを知らなすぎるけれど。

 それでも婚姻届けを出した日に比べたら、武琉への好感度は上昇している。

 このままいけばなんの問題なく、案外楽しく契約期間を過ごせるに違いない。

 昼休憩が終わり菜恵と別れて香澄は自分の仕事に戻った。

 終業後、香澄は一時間ほど残業をしてから調達部のフロアを出て廊下を歩いていると、思いがけず声をかけられた。

「西條香澄さん?」

 足を止めて振り返ると、若い女性が佇んでいた。
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