あなたとは合わないと思っていたけれど
 彼は香澄と目が合うとにこりと微笑んだ。

「お土産買ってきた」

 彼が渡してくれた袋に入っていたのは、お茶と焼き菓子だった。

 彼はフライトから戻ってくると、毎回こういったお土産を律儀にくれる。

 夫としての義務だと思っているのだろうか。

 彼はセンスがよくて、いつも香澄がうれしくなるようなものを選んでくる。

 今回のお茶菓子も入れ物からして可愛らしくて、飾っておきたくなるようなものだ。

「ありがとうございます! すごく可愛い……」

 つい声が大きくなってしまったが、武琉は「気に入ったみたいでよかった」と機嫌よさそうに微笑んだ。

「早速、このお茶淹れてみますね。武琉さんも飲んでみませんか?」

 香澄がそう言うと、彼は意外そうに目を瞬いた。

 彼の反応を見た香澄は、自分があまりに自然に誘いの言葉をかけたことに気づき動揺した。

(最近、緊張感がなくなって来たかも)

 人は意識しなくても時間が経てば新たな環境に慣れると聞いたことがあるが、その通りだ。

 干渉し合わないというルールが、香澄の中で段々曖昧になっている。

(図々しいと思われたかな?)

 心配になったが武琉は、柔らかな表情で頷いてくれた。

「ありがとう。頂くよ」

(よかった、彼は気にしてないみたい)

 香澄はほっと肩をなでおろした。

(せっかくだから蛯名さんが来たことを報告しよう)
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