あなたとは合わないと思っていたけれど
 しかし武流は「そんなことない」と首を振った。続いて何かを思い出すように目を細める。

「たしかに家にいるときはあまり動かないけど、だらしないっていうのとは違う」
「え?」
「香澄は自分の時間を楽しんでるんだろ? そのために、どんな方法を取るか何が好きかは人それぞれだ」

 香澄は僅かに目を見開いた。

 なんて前向きに解釈してくれるのだろう。

 自分の生き方を理解してくれる相手は見つかり辛いと思っていた。だから無理して結婚なんてしたくないと思っていたけれど。

(まさか正反対の性格の契約結婚相手が理解してくれるなんて)

 不思議な驚きだ。

 武琉は香澄がまんざらでもない気持ちでいることに気づいているのか、運転をしながらも口角を上げていた。しばらくしてから口を開く。

「二時か……香澄はこの後、なにか予定がある?」
「いえ、とくには」

 あるわけがない。むしろ武琉の方が多忙ではないのだろうか。彼はいつも休日を無駄にせずエネルギッシュに過ごしているから。

「俺も母がいつ解放してくれるか分からないから、予定を入れていなかったんだ。思ったより早く終わったからどこかに寄らないか?」
「え?」

 武琉が予定を入れていなかったのは納得できるが、まさか香澄を誘うとは思っていなかった。

「お腹が空いてないか? この近くに知人のレストランがあるから、よかったら行ってみないか?」
「……はい」
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