あなたとは合わないと思っていたけれど
「よし、じゃあ連絡を入れておく」

 武琉は満足そうな顔をした後、てきぱきと連絡をした。どうやら店のオーナーと知り合いのようで、親し気に話しかけ席を確保してもらっているようだ。

(武琉さんって顔が広そうだな)

 仕事中心の生活をしていて遊ぶ時間なんて少ないはずなのに、香澄よりも遥かに人付き合いをしている。

 気持ちが常に外に向いて行動的な武琉と、内に籠ってひとりでなにかすることが好きな香澄。

 全く違うふたりだ。それなのに、なぜか一緒にいて違和感がない。本来気が進まないはずの誘いにも、それほど抵抗感なく頷いてしまった。

(……きっと、お腹が空いてるからだよね)

 武琉の友人が経営するレストランなら、きっと期待ができるだろう。


 車を十五分ほど走らせて到着したのは、古い洋館だった。

「ここ、お店なんですか?」

 車を降りた香澄は、当たりをキョロキョロと見回す。

 看板はどこにも見当たらない。中の様子もよく見えない。これでは集客できないのではないだろうか。両開きの扉が入り口だろうが、もしひとりで来ていたら絶対に入ろうと思わないだろう。

「口コミで客が来るんだ。さあ入ろう」

「はい」

 香澄は少し緊張しながら武琉の後について行く。扉を開けて中に入ると受付がありその先には広いロビーになっていた。
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