あなたとは合わないと思っていたけれど
 四人掛けの丸テーブルが八脚ほど。かなりゆとりのある配置だ。満席に近く、空席は二か所だけだった。

 レストランの内装やインテリア、客層などがからかなりの高級レストランだということを察した。

 支配人がやって来て、予約席と札が置いてある席に向かった。

「ここ、フレンチレストランですか?」

 席に着くと、香澄は小声で武琉に話しかけた。

「そう。ランチのコースでいい?」
「はい、魚料理をお願いします。飲み物は武琉さんに任せていいですか?」
「ああ」

 香澄の実家は特別裕福ではないが、母はマナー教育に厳しく、経験のためと幼い頃からときどきこういった店に来る機会はあった。社会人になってからも上司と共に食事をすることがあったので、このような場で特別困ることはない。

 義母を訪ねるのにそれなりの服装をしていたおかげで浮く心配がなくてよかった。

 改まった格好で、特別感があるレストランで食事。ふとこのシチュエーションについて考えた。

(なんだかデートみたい)

 そんな発想になった自分に少し驚いた。

(なに、考えてるんだろ。デートのはずないじゃない)

 彼は友達の店に来ただけで他意はない。

「素敵なお店ですね」

 香澄は気持ちを切り替えて、武琉に話しかけた。無難な話題だが、彼は嬉しそうに顔を輝かせた。

「ほんと? 気に入ったならよかった。知人に紹介したかったんだけど、今日は店には出ていないんだ」
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