あなたとは合わないと思っていたけれど
 香澄は黙り込んだ。

(どれだけ知り合いがいるの?)

 高級レストランに会員制の家具店。他にももっと知り合いが居そうだ。

「行ってみるか?」

 香澄は迷わず頷いた。足に疲れを感じているが、武琉の知人の店を見てみたい気持ちが勝った。

「行こう。少し離れた場所にあるから車で移動する」
「はい」

 武琉は車を走らせ高速に乗った。本当に遠くにあるようだ。そんな場所に、思いついたらすぐ行こうとする行動力に香澄は感心していた。
「武琉さんて本当にアクティブですよね。それにあらゆる業界に友達がいそう」
「そうだな。フットワークは軽い方だし、知り合いも多いよ」
「大勢と人付き合い出来るのって、私から見るとすごいです」
「すごいかは分からないが、出来るだけ人との縁を大事にしたいと思ってるんだ」

 武琉は前方を見ながら答えた。

「人との縁ですか……」
「そう。それが一番の財産だと思うから」
「でも、付き合いが大変とは思わないですか? いろんな人がいるから傷つくこともあるでしょう?」

 香澄は仕事以外では人付き合いが苦手だ。

 外出するが好きではないのもあるが、元々心を許した相手以外と接するのが苦手だ。

 相手を不快にさせないか、失言にならないかと会話ひとつにやたらと気を使うし、相手に失望されたらどうしようとナーバスになってしまう方だ。
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