あなたとは合わないと思っていたけれど
六章 心惹かれる
「武琉君、何を探してるの?」
武琉がステイ先のオーストラリアの店舗で香澄への土産を選んでいると、背後から女性の声がした。
棚の下段の商品を見る為に屈んでいた武琉の背中に、彼女は小さな体をくっつくようにして商品を覗き込んでくる。
声と態度で振り返らなくても分かった。幼馴染の蛯名早織だと。
彼女の家とは家族ぐるみの付き合いをしているため、幼い頃からの知り合いだ。
武琉の方が六歳年上なため、兄代わりとして面倒をみてきたが、甘やかしすぎたのか成人した今でも子供っぽさが抜けきれていない。
武琉はゆっくり立ち上がり、彼女を引き離した。
「子供みたいな態度は止めるように言ってるだろ? いつかトラブルになるぞ」
「子供扱いしないで。武琉君以外にはちゃんとした態度だから大丈夫だよ」
注意をしても暖簾に腕押しで通じない。
「真面目に聞くんだ。自由時間とはいえ俺たちは仕事で滞在しているんだ。言動を改めろ」
「仕事はしっかりしてるもん」
確かに仕事はそれなりにこなしているように見える。
彼女がASJにCAとして入社したときは、驚き厳しい訓練で挫折するだろうと思っていたが、意外にも今日まで続いている。
多少は我慢を覚え、社会性も身に付けているのかもしれない。
ただ武琉に対しては幼馴染という気安さから甘えがある。もう少し厳しくしたいところだが、家同士の付き合い、そして幼い頃から面倒をみてきた情で邪険にもしきれないところがあり、武琉の頭を悩ませている。
「はあ……どうして来たんだ。みんなと食事に行ったんじゃなかったのか?」
観光客に人気のレストランに、チームみんなで行こうと声がかかったが、武琉は断ってお土産探しをしに来た。早織はみんなと一緒に出掛けたと思っていた。
「その予定だったけど武琉君がいなかったから」
拗ねたようなその声音に、武琉は脱力した。
「もう子供じゃないと自分で言ってたじゃないか。俺がいなくたっていいだろ」
「やだ。せっかく同じフライトなんだから、もっと構ってよ」