あなたとは合わないと思っていたけれど
 恋愛感情がなくても、彼といる時間は居心地がいいと感じる。

 自分はひとりの時間が好きで大切にしていたはずなのに、いつの頃からか武琉が帰宅する日は、彼の帰りを意識している。
 今か今かと帰宅を楽しみにしている。

 話したいことがたくさんあるし、彼のフライトがどうだったか話を聞きたいと思う。

 そんな自分の変化に戸惑いを覚えた。


 菜恵と食事をしてから数日後の午前。香澄は仕事で羽田空港に赴いていた。

 空港ビル内のASJ運行管理センター内で、資材調達関連の打ち合わせをした。当初の予定をオーバーし終了したのは、十一時を過ぎていたので、昼食を取ってから本部に帰社することにした。

 久しぶりに羽田空港に来た。せっかくだから飛行機の発着陸を見ようと展望デッキに向かう。

 デッキには香澄の他にも、飛行機を眺めに来た人々がたくさんいた。

 香澄は端の方の比較的人が少ないエリアに向かい、フェンスの前に佇んだ。

 今日は雲ひとつない快晴で、空を飛ぶ銀の機体がよく見える。

 新人の頃は羽田空港でグランドスタッフとして働いていた香澄にとって、見慣れた光景のはずなのに、なぜか胸に迫るものを感じた。
< 92 / 171 >

この作品をシェア

pagetop