あなたとは合わないと思っていたけれど
 やはり昔からパイロットやCAは人気があるのだ。

 香澄も立ち止まり、彼らに目を遣った。

 先頭を歩いているのは袖口に機長の証である四本のゴールドラインが入った制服を纏う年輩の男性。そのすぐ斜め後ろを同じく三本のゴールドライン入りの制服姿の武琉だった。更に後ろをCA数人が続いている。

 香澄は武琉から視線を逸らせなくなった。

(……すごくかっこいい)

 考えてみれば仕事中の彼を見るのは、初めてだ。

 パイロットの制服を見事に着こなし、歩く姿は颯爽としていて自信に溢れている。

(なんだか輝いて見える)

 憧れの視線を集める彼が、自分の夫だなんて信じられない。そんな気持ちになる。

 つい見惚れていたらいつの間にか、彼らとの距離が迫っていた。

  香澄は行き会わないように、急いで進行方向を変えようとした。しかしそれより先に武琉の視線が香澄を捉えた。

 目が合った瞬間、香澄は軽い会釈をして早々に立ち去るつもりだった。フライト前に余計な気を使わせたくなかったからだ。

 ところが武琉はにこやかな笑顔になり、ここに居るとアピールするかのように、香澄に向けて軽く手まで上げた。

 おかげで機長や周囲の人々まで、香澄の存在に気づいてしまった。

 黙って通り過ぎる訳にもいかなくなり、その場で立ち止まって武琉たち一向が向かってくるのを待ち構える。
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