あなたとは合わないと思っていたけれど
ゴールデンウイークは航空会社にとって稼ぎ時。武琉も休みなくフライト続きだった。
香澄は一日だけ休日出勤をしたが、残りは自宅でひとりで過ごした。
気分転換に自室を模様替えしたり、気になっていたレシピを試したり。新しいコーヒー豆を買ってきたり、リストアップしていたB級映画を見たりと自分なりに充実した日を過ごした。
そんなふうに別々に過ごした連休が終わった頃、武琉の実家から連絡があった。
土曜日に義父の誕生日パーティがあるから、夫婦揃って参加するようにとの連絡だ。
武琉からその日が義父の誕生日だとは聞いていたから、心構えはできていた。
しかし義実家に集まってお祝いをするのではなく、都内の高級ホテルで部屋を借りて盛大に行なうと聞き驚いた。
「お義父さまの誕生日にはいつもホテルでパーティをするの?」
香澄の感覚では、父親の誕生日をホテルの部屋を借りて祝うというのは意外だった。
(名家ではよくあることなのかな)
「母がパーティー好きで理由をつけてやりたがるんだ。今年は六十歳の区切りだからとくに盛大にするみたいだ」
「そうなんだ。私たちもしっかり用意しないとね」
「プレゼントは何がいいのかな」
「父は趣味でワインを集めている。ワイナリーまで買いにいけたらいいが、そんな時間はなさそうだな」
「それなら専門店に買いに行く? この前良さそうなお店を発見したの。私に任せてくれるなら買ってくるけど」
香澄は武琉と違い広い人脈などないが、ワインは好きで頻繁に情報収取している。良さそうなものが有ったら購入して、おつまみと共に楽しむのが好きなのだ。
「いいのか?」
武琉は少し申し訳なさそうな表情になった。きっと香澄に頼めるような内容ではないと思っているのだろう。
実際契約では、自分の家族のことは自分でとなっているから。けれど香澄は彼をフォローしたいと思った。
「大丈夫。ちょうど行きたかったお店だから」
「ありがとう、頼むよ」
負担に感じないようについでだとのニュアンスで答えると、武琉は今度は頷いてくれた。
香澄は仕事帰りに専門店に立ち寄り、スタッフと相談して選んだ貴腐ワインを購入して当日に備えたのだった。