初恋の続きはトキメキとともに。
それから待つこと数分。

「あの〜、もしかして南雲さん、ですか?」

髪をポニーテールに結んだ可愛らしい雰囲気の小柄な女性が私におずおずと声を掛けてきた。

黒目がちの大きな瞳には少し不安げな色が滲んでいる。

「あ、はい! 私が南雲です。本社営業部の方ですか?」

「そうです、そうです。良かった〜間違ってなかったぁ!」

待ち合わせの人物であるとお互いに認め合うと、女性はホッと表情を見せた後、パッと明るく人懐っこい笑顔を浮かべた。

「初めまして! わたし、高梨花音(たかなしかのん)って言います!」

「初めまして、南雲遥香です。今日からよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします! 井澤課長から聞いたんですけど、南雲さんって神奈川支社の総務にいたんですよね? 入社は何年目なんですか?」

「今年で6年目です。高梨さんは本社営業部が長いんですか?」

「いえいえ! わたしはまだ入社2年目で営業一課の中では一番下っ端です。南雲さんよりも年下ですし全然敬語じゃなくて大丈夫ですよ〜! ……あ、ヤバイ! のんびりしてたら朝礼に間に合わなくなっちゃう。それじゃあ本社営業部のあるフロアに案内しますね!」

話してみると、高梨さんは第一印象の通りの女性だった。

明るくハキハキとしていて、とても愛嬌がある。

人の不安を和らげるような気さくさに、張り詰めていた緊張が解けていく気がした。

 ……最初に会った同じ部署の人が高梨さんで良かった。

高梨さんはフロアへと私を先導する間も、歩きながら本社や部署について色々と情報を教えてくれた。

私の配属先である営業一課は総勢20人。

井澤課長をトップとして、その下に主任が3人、そして一般社員が名を連ねる組織体制だそうだ。

ホームケア事業部が扱う商材は洗剤、掃除用品、芳香剤などで、営業一課の担当領域は大手スーパーやドラッグストアだという。

今日はフロアに着いたら、まず営業一課の朝礼に参加してメンバーと顔合わせをした後、井澤課長と面談。

その後、高梨さんが関係部署や本社内を案内してくれる予定になっているらしい。
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