初恋の続きはトキメキとともに。
洸くんは水原先輩のことを、“知り合い”と言った。

だけど私は知っている。

その“知り合い”が“元カノ”だということを。

でも知らないふりをした。

私と洸くんが立ち止まって会話をしている間に、水原先輩も洸くんの姿に気づいたようだ。

にこりと笑ってこちらへ近づいてくる。

「洸平! こんなところで会うなんて偶然ね!」

「……ああ」

目を細めて笑う水原先輩からは、自分の美しさを分かっている人だけが持つ余裕が漂っていた。

周囲の空気までふっと華やぐ。

「先日に続いてまた会えて嬉しいわ。ねぇ、あの後電話したのに洸平ったら全然出てくれないじゃない。仕事忙しいの? 洸平って昔から妥協しないタイプだものね。久しぶりに色々話したいから飲みに行きたいのに」

「この前も言った通り、そういうつもりはないから。悪いけど、電話もらっても出ないよ」

「洸平どうしちゃったの? 昔はあんなに優しかったのに。……あ、そうだ! ねぇ、真哉と由希子が結婚することになったって聞いた? 今年の夏に挙式するらしいわよ」

「その話なら真哉から連絡来た。もう知ってる」

「じゃあ輝明が海外赴任になったって話は? 今ロンドンにいるらしいの! 今度みんなで遊びに行きたいよね〜って由希子とも話してて」

「それも聞いた。赴任前に輝明とも会ったし」

目の前では、2人の間でだけ通じる話が、軽やかに交わされていく。

私の知らない“あの頃”の空気が、目の前でふわりと蘇っているみたいだった。

洸くんの隣にいるのに、まるで自分だけ別の世界に立っているような気がした。

「……というか、もういい? そろそろ行きたいんだけど」

ここまで淡々と受け答えをしていた洸くんだったが、話が長くなりそうだと感じたのか、私を気にするように視線を向け、会話を切り上げた。

その一言をきっかけに、ここで初めて水原先輩の視線が私に向く。

「彼女?」

値踏みするような目が、私の全身をゆっくりと這った。

審判を受ける断罪人にでもなったかのように、私は息を止める。

「分かったわ。……じゃあ、洸平、またね」

洸くんが口を開くより早く、水原先輩はふふっと艶やかに笑い、その場を去っていった。

その微笑みには、ただの挨拶以上の何かが潜んでいる気がした。
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