初恋の続きはトキメキとともに。
「……ごめん、邪魔が入って。遥香の知らない人の話ばかりで退屈だったでしょ。学生時代の同級生だから共通の知人が多くて」

「そうなんですね。……綺麗な人、でしたね」

「まぁ、モデルとかやってたみたいだから。それより行こうか?」

「……はい」

その後、私達は何事もなかったようにショッピングを再開した。

けれど、私の脳裏では高校時代の記憶――洸くんと水原先輩が笑い合う姿が次から次へと浮かんできて、胸のざわざわが止まらない。

極め付けに、私は見てしまった。

それは洸くんの家に一緒に戻り、アウトレットで購入した食器を使って夕食をとった後のこと。

洸くんがシャワーを浴びに行った隙に、覗いた水原先輩のSNS。

そこには……

――『また同じ場所で、同じ空を見上げた。タイミングって不思議。必要な人には、ちゃんとまた出会える。#偶然じゃない気がする #アウトレット』

ノスタルジックな色彩をした空の写真とともに、意味深な文章が綴られていた。

 ……勘違いじゃなかった。やっぱり洸くんのことだ。

今日のやりとりから推察すると、今のところ洸くんには水原先輩とやり直す意思はないように思う。

でも明らかに水原先輩の方には未練が窺えた。

 ……水原先輩が本気で洸くんに接近したら? そんなの分かりきってる。あんなに綺麗で、思い出もいっぱいある気心知れた女性に迫られたら、誰でも心が揺れちゃうよ。

不安がぶわっと胸を覆い、心の中が真っ暗に染まった。

その夜、私は洸くんと抱き合いながら、慣れ親しみつつある体温になんだか泣きそうになった――。


◇◇◇


それから程なくして“地獄の月”に突入した。

残業・休日出勤も珍しくない日々に、オフィスの空気もピリピリしている。

噂通りの修羅場に、私も遅れを取るまいとただただ無心で手を動かし、積み上がる書類と格闘した。

余計な事を考える暇がない忙しさは、今の私にとっては正直ありがたい。

本社営業部のエースである洸くんは私以上に忙しく、日中ほぼオフィスを不在にしていて、社内でもなかなか姿を見かけない。

あまりの多忙さから、週末も会う時間を取れずにいる状態が続いていた。
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