初恋の続きはトキメキとともに。
「いや〜、今年の年度末は例年に輪をかけて忙しい! なんかもう笑えてくるわ。はははは」

「あ、久我さん! ちょうど良かった! 外回りから帰って早々ですけど、これチェックしてください!」

「ちょっとは休憩させてよぉ! しかも今、一応定時後だよ? 高梨さんって鬼!? 南雲さんもそう思うよね……!?」

「ふふっ、不在がちな営業担当を捕まえたい高梨さんの気持ちは分かるから、私はなんとも言えないかな。でも疲れてる久我くんの気持ちも分かるよ。だから私、飲み物でも買ってくるね」

「えっ、いいの!? 助かる〜!」

ずっと座りっぱなしだったこともあり、少し気分転換をしたかった私は、買い出しを申し出て席を立つ。

リフレッシュルールで飲み物とちょっとしたお菓子を購入し、すぐさま引き返して廊下を歩き始めた。

「南雲さん」

その道中、ふいに背後から名前を呼ばれて振り返ると、結城くんが立っていた。

「結城くんも残業? 情シスも今忙しいの?」

「営業部ほどではない。けど、まぁそれなりに。……それより、ちょっとこっち来て」

「えっ? どこ行くの?」

「いいから。こっち」

会話を始めた途端、なぜかマジマジと私の顔を覗き込んできた結城くんが、突然そう言ってズンズン歩き出す。

訳が分からないけど、きっとなにか結城くんなりの理由があるのだろう。

これまで何度か助けてもらった経験があり、同期として結城くんに信頼を寄せていた私は、黙ってその背を追いかけた。

結城くんが足を止めたのは、それからすぐのこと。

避難階段の踊り場だった。

定時を過ぎた時刻のため、辺りに人気はなく、シンと静まり返っている。

「ここに、何かあるの?」

「……顔色が悪い」

「えっ?」

「様子もおかしい。なんか悩んでる?」

この場に来た理由を問いかけたところ、返ってきた予想外すぎる返事に私は目を丸くした。

以前にも同様のことがあった。

ぶっきらぼうな口調だけど、内面を見透かしたような鋭い言葉にまたドキッとさせられる。
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