初恋の続きはトキメキとともに。
温かな体温に包まれ、無意識のうちに強張っていた体がほぐれていく。

洸くんは私を抱きしめたまま深く息を吐いて、小さく笑う。

「遥香、話してくれてありがとう」

鼓膜を震わせるのは、耳に心地良い優しい声だ。

聞いているだけで心までふわりと緩む。

それから洸くんはゆっくりとした声で続けた。

「俺からもちゃんと説明させて。瞳のこと、遥香が気にしてるみたいだから」

私は小さく頷く。

今までちゃんと訊ねられずモヤモヤしてたから、洸くんの口から教えてもらえるならぜひ聞かせて欲しい。

「確かに、長く付き合ってた。でも今は、本当に何とも思ってないよ。そもそも別れたのも価値観の違いだしね。途中から惰性で続いていた状態だったし、最終的にはお互い未練もなくスッパリ別れたから」

「そう、なんですか? でも水原先輩は未練がありそうでしたけど……」

「いや、それはないよ。別れた後、瞳には何人も恋人がいたみたいだし。これは共通の知人に聞いた話だけど……30歳目前になって周囲が続々と結婚して焦ってるらしいんだよね。そんな時に偶然俺と再会して、変な錯覚を起こしたんじゃない?」

洸くんの話によれば、水原先輩とは年末年始休暇で帰省した際に偶然再会したそうだ。

その時にも軽い口調で「今度飲みに行こう」と誘われたけど、ハッキリ断ったらしい。

私に言わなかったのは、わざわざ話す必要はないと思ったからで、やましい気持ちがあったからではないという。

「でも、洸くんが恋愛から一線引いてたのは……水原先輩のことを引きずってたからじゃないんですか……?」

「それも誤解してる。引きずってたんじゃなくて、恋愛が面倒になったんだ。……瞳の前にも長く付き合った子がいたんだけど、どちらとも結局終わって。その時、積み上げた時間がゼロになることに徒労感を覚えたんだ。恋愛って、いずれ終わるんだと思うと始める気にならなくなって」

「……だから、恋愛から遠ざかってたんですか?」

「そう、遥香に出会うまでは、ね」
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