初恋の続きはトキメキとともに。
ひと通り本社内を見学した後は、仕事上関わる機会が多いというビューティーケア事業部やパーソナルケア事業部、そして同じ事業部の営業二課や三課へ挨拶へ行き、私は何度も自己紹介を繰り返した。

時期ハズレの異動ということもあり、挨拶の度に注目を浴びて、胃の痛くなる時間をやり過ごした。

「南雲さん、お疲れ様でした! これで挨拶すべき部署へは全部行き終わりましたよ! もうすぐランチの時間ですし、一旦デスクに戻ってから一緒に社食に行きましょ! あ、もしかしてお弁当とか持って来てたりします?」

「ううん。何も持って来てないから、ぜひ社食にご一緒させてもらえると嬉しいな」

「良かったです! チームの他のメンバーも誘いましょ。たぶん皆さんも南雲さんと話したいってウズウズしてると思いますから!」

そんな楽しいランチ計画を高梨さんと話しているうちに、気づけば一課のデスクまで戻ってきていた。

一旦自席に座ってランチへ行く準備をしていると、ふと背後がなにやら賑やかな空気になっているのを感じた。

「おかえり」「お疲れ」等の声が飛び交っているから、たぶん誰かが営業先からオフィスに戻ってきたのだろう。

その誰かはどんどんこちらへ近づいてきているようだ。

そして……

「今日異動してきた南雲さんだよね?」

私の隣の席に鞄を置いて腰掛けると、こちらに向かって話し掛けてきた。

耳に心地よく響く、その包み込むような優しい声には聞き覚えがある。

いや、聞き覚えがあるどころか、10年以上の時を経ても脳裏に刻み込まれて忘れられない。

まさかと信じられない思いで、私は驚いて隣に目を向けた。

「初めまして、主任の広瀬洸平(こうへい)です。課長から聞いてると思うけど、これから俺の担当アシスタントよろしくね」


そう言って目を細め柔らかく微笑んだのは、紛れもなく私の初恋の人――大人になった広瀬先輩だった。
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