初恋の続きはトキメキとともに。
そんな3人のやりとりを微笑ましく眺めながら、私はオムライスを掬ったスプーンを口へ運ぶ。

ただ、目の前にあの広瀬先輩がいると思うとどうしても緊張してしまい、スプーンを持つ手が微かに震えてしまっていた。

「それにしても南雲さんがうちのチームに加わってくれるのは心強いっすね! 同期も南雲さんは仕事できるって言ってたし!」

「そうなんですかぁ! 南雲さんスゴイんですね! ていうか久我さんと南雲さんって同期なんですか?」

ふいに高梨さんから問いかけられて、私は食事をする手を止めた。

その質問に答えたいものの、残念ながら答えを持ち合わせていない。

なにしろ同期は100人以上いるため、とてもじゃないが全員のことを覚えてはいないのだ。

 ……同い年だし同期なのかな?

私は小さく首を傾げて、斜め前に座る久我くんに視線を向けた。

「あー、たぶん南雲さんはオレのこと知らないかもなぁ。同期だけど接点なかったし」

「そうなんだ。でも、なんで久我くんは私を同期だって知ってるの?」

「オレ、神奈川支社の営業部にいる同期の内山(うちやま)と仲良いんだ! で、アイツから南雲さんの話聞いててさ。いつも痒い所に手が届くような対応でめっちゃ頼りになるって絶賛してた!」

カラカラっと笑いながら共通の知り合いから教えてもらったという私の評判を語る久我くん。

同期に仕事ぶりを評価してもらえるのは嬉しいけれど、切実に「今は辞めて!」と叫び出したい。

だって、だって……

 ……ううっ、広瀬先輩にめちゃくちゃ見られてる!

目の前に座る広瀬先輩が、その話を耳にして興味を引かれたような眼差しで私をじっと見つめてくるのだ。

高校時代は一方的に私が見つめるだけ。

決してこちらを向くことなどなかった瞳に見据えられ、頬が一気に熱くなる。

 ……こんな話を聞いたら、私が仕事できるって勘違いしちゃうよね。もう! 総務課長といい、内山くんといい、過剰に褒めすぎだよ。

井澤課長に続いて、広瀬先輩にも仕事ぶりを期待されそうな気配を感じ、変な汗が噴き出してきた。
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