初恋の続きはトキメキとともに。
 ……ど、どうしよう……! あの広瀬先輩からプリンを貰っちゃた! し、信じられないっ!

そう、高校時代は遠くから一方的に見つめるだけだったのに、今は名前を呼ばれ、言葉を交わし、笑顔を向けられているのだ。

高校生の頃の私が知ったら大パニックである。

いや、今の私も十分心の中は大騒ぎだ。

私も少しは大人になったから、たぶん顔には出ていないはず。

とはいえ、動揺をやり過ごすためにしばし固まっていたら、助け舟を出すように高梨さん&久我くんコンビが呆れた声を上げた。

「主任〜、そういうとこですよ! 主任って女たらしではないけど、ホント、無自覚人たらしですよね」

「高梨の言う通りっすよ。誰にでも分け隔てなく優しいなんて罪な男っすよね。南雲さん、大丈夫? 広瀬主任はいっつもこんな感じで優しさがデフォルトな人なんだ。慣れるしかないから!」

「えっ? あ、うん、分かった。……早く慣れるように頑張るね」

「コラコラ、久我も高梨さんも、変なことを南雲さんに吹き込んで混乱させないように。南雲さん、2人の言うことは気にしなくていいからね」

広瀬先輩は“変なこと”と言ったけれど、私は久我くんと高梨さんの言葉には妙に納得してしまった。

確かに広瀬先輩は人たらしだし、彼の優しさに対して絶対に慣れは必要だ。

 ……じゃないと、うっかり心奪われちゃうもんね。昔の私みたいに。

思わず傘を貸してもらった時の出来事が脳裏をよぎる。

それにしても、デスクで顔を合わせた時からランチを食べている今この時まで、それなりに時間が経っているけど、広瀬先輩が私を高校の後輩だと思い出す素振りは今のところ一切なかった。

「初めまして」と挨拶された時から気づいてはいたけれど、ちょっとばかり寂しい。

でも当然と言えば当然である。

2学年も離れていたし、接点もなく、話したのは傘を借りた時の一度きりだ。

一方的に恋心を抱いていたのは私。

広瀬先輩の眼中にはやっぱり入っていなかったんだなと改めて思い知らされた。
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