初恋の続きはトキメキとともに。
 ……広瀬先輩は憧れの初恋の人で、今でも心の奥底で燻っていた特別な存在だけど……でもだからと言って昔みたいに好きになったりは絶対しないようにしなきゃ……!

その不毛さを私は痛いくらい知っているから。

久我くんの助言通り、早く今の広瀬先輩に慣れて、うっかり恋心を再熱させないように気をつけようと私は心に誓った。


◇◇◇


「――という感じで、営業アシスタントのわたし達は、基本的に外回りの営業担当のサポートが仕事です!」

ランチを終えた午後からは、フロア内の会議室に籠って、私は高梨さんから業務のレクチャーをしてもらっていた。

忘れないようノートにメモを取り、仕事内容への理解を深めていく。

売上データの集計や管理、受発注対応、取引先への提案資料作成などは総務の頃とは違う業務だけれど、基本の事務作業はそう大きく変わらなそうだ。

総務も社員のサポート業務だったため、フィールドは違えど通じるものも多い。

これまで培ってきた経験も役に立ちそうだと分かり、私は少しだけホッとした。

「ちなみにこの後ですけど、情報システム部――通称・情報シスの人がここに来て南雲さんのPCに顧客管理システムを入れてくれる予定になってます!」

「顧客管理システム?」

「はい、営業部だけが使ってるシステムです! 総務だった南雲さんのPCには今はまだインストールされてないんですよ。そのセッティングが終わったら実際に操作しながら色々説明しますね!」

高梨さんによれば、顧客管理システムは営業アシスタントがほぼ毎日使うようなものらしい。

システムが使えないと仕事にならないそうだ。

そんな話を聞いていると、ちょうど会議室のドアをトントンとノックする音がその場に鳴り響いた。

「あっ、タイミングよくいらっしゃったみたいですね! は〜い、どうぞ入ってくださーい!」

ドアに向かって張り上げた高梨さんの声に応じて、ドアが静かに開く。

会議室に入って来たのは、黒縁眼鏡をかけた整った顔立ちの男性だった。

落ち着いた色のTシャツの上にジャケットを羽織り、スラックスと組み合わせた、シンプルで堅苦しすぎない服装をしている。
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