初恋の続きはトキメキとともに。
私はさっそくふぅっと肩の力を抜いた。

「……疲れてるな」

気を抜いた途端、ふいに掛けられた声に私は思わずビクッとする。

 ……あ、そうだ。まだ結城くんが会議室にいたんだった……!

無言のままその場でインストール完了を待つ結城くんがあまりに静かすぎて、私としたことがすっかりその存在を失念してしまっていた。

「……うん、まぁ異動初日だから。慣れるまではしょうがないかなって思ってるよ」

「それだけ?」

「えっ?」

「……疲労だけじゃなく、なんか様子がおかしく見えるけど」

結城くんがぶっきらぼうに発したその言葉に、ついドキッとした。

内面を見透かされたような気がしたのだ。

実際結城くんの言う通りだった。

私が疲れているのは、異動初日だらかという理由だけではない。

もちろんそれも大きいのだけれど……

 ……同じくらい、ううん、それ以上に思いがけず広瀬先輩に再会した衝撃と動揺が大きいんだよね。

身体的な疲労には影響が少ないと思うけど、心理的な疲労については断然こちらの理由が圧勝だった。

それにしても結城くんが鋭すぎでビックリする。

そんなに顔に出てしまっていただろうか。

隠そうとしていることを見抜かれたみたいな気がして、非常に居心地が悪い。

私がなにも答えられずにいると、幸いなことに会議室にペットボトルを抱えた高梨さんが帰って来た。

そのタイミングでインストールも終わり、結城くんも再びパソコンに向かって動作確認の作業に入る。

結城くんとの会話が途切れて、私はホッと安堵の息をついた。

 ……顔見知り程度の同期に異変を悟られるなんて、私もまだまだだなぁ。顔に出ないようにこれまで以上に気をつけよう……!

本格的に営業アシスタントとしての業務が始まれば、これから広瀬先輩と接する機会は今日以上に多くなるはずだ。

憧れの初恋の人だからといちいち心を揺らしていては仕事に支障が出てしまうだろう。

ランチの時に助言を受けたように、早く広瀬先輩が近くにいる環境に慣れて、広瀬先輩の前でも自然に振る舞えるようになることが私の第一課題だ。

 ……うん、頑張らなきゃ!


こうして、色々な気づきと課題を残し、私の異動初日はまたたく間に過ぎていった。
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