初恋の続きはトキメキとともに。
長年お世話になった信頼する上司にそう言われ、私は少し気持ちが前向きになるのを感じた。
確かに課長の言うとおりだ。
……私で大丈夫かなって不安はあるけど……。うん、これは成長のチャンスだってプラス思考に捉えた方がいいよね……!
慎重で臆病な私は、意識しないと不安に飲み込まれがちだ。
心の中で自分を意識的に叱咤激励し、私はグッと顔を上げる。
課長と共に会議室から出る頃には、驚きと動揺が表情に出ないくらいには心を落ち着かせることに成功していた。
とはいえ、いくら前向きに考えようとしても、異動という大きな変化を前に不安を完全に払拭するのは難しく……
「どうしよう、茉侑。もうあと数日で異動日が来ちゃう! すっごく不安だよぉ〜!」
私は仕事終わりに幼馴染で大親友の星村茉侑の家にお邪魔して、盛大に弱音を吐き出していた。
「大丈夫、大丈夫! なんとかなるって! まぁ遥香の場合、勤務地も部署も変わる異動だから転職するくらい身の回りの環境に変化があるだろうしね。そりゃ緊張するか」
転職経験のある茉侑は私の話を聞きながら、明るい髪色のボブを揺らし、大きく頷いて共感を示してくれる。
ただし、茉侑の視線は私の指先へと一直線に向かっていた。
「遥香、ここデザインと色どうする? グラデ? フレンチ?」
「デザインはフレンチ、色はピンクベージュでお願いしていい? 目立ちすぎないシンプルな感じがいいかなと思って」
「了解! 異動前だもんね。じゃあオフィス仕様の上品な感じにしとくね」
茉侑は私に希望を訊ね終えると、爪にジェルネイルを施していく。
副業としてネイルリストをしている茉侑に、私は時折こうして自宅でネイルをしてもらっているのだ。
施術中にお喋りを楽しむのが、ここ最近の私達の定番となっている。
「でもさぁ、異動で良いこともあるかもよ? ほら、出会いのチャンスじゃん!」
「出会い?」
「新しい職場にイケメンがいるかもでしょ? それで恋に落ちちゃったりして!」
「う〜ん。ダメだ、全然想像できないよ」
確かに課長の言うとおりだ。
……私で大丈夫かなって不安はあるけど……。うん、これは成長のチャンスだってプラス思考に捉えた方がいいよね……!
慎重で臆病な私は、意識しないと不安に飲み込まれがちだ。
心の中で自分を意識的に叱咤激励し、私はグッと顔を上げる。
課長と共に会議室から出る頃には、驚きと動揺が表情に出ないくらいには心を落ち着かせることに成功していた。
とはいえ、いくら前向きに考えようとしても、異動という大きな変化を前に不安を完全に払拭するのは難しく……
「どうしよう、茉侑。もうあと数日で異動日が来ちゃう! すっごく不安だよぉ〜!」
私は仕事終わりに幼馴染で大親友の星村茉侑の家にお邪魔して、盛大に弱音を吐き出していた。
「大丈夫、大丈夫! なんとかなるって! まぁ遥香の場合、勤務地も部署も変わる異動だから転職するくらい身の回りの環境に変化があるだろうしね。そりゃ緊張するか」
転職経験のある茉侑は私の話を聞きながら、明るい髪色のボブを揺らし、大きく頷いて共感を示してくれる。
ただし、茉侑の視線は私の指先へと一直線に向かっていた。
「遥香、ここデザインと色どうする? グラデ? フレンチ?」
「デザインはフレンチ、色はピンクベージュでお願いしていい? 目立ちすぎないシンプルな感じがいいかなと思って」
「了解! 異動前だもんね。じゃあオフィス仕様の上品な感じにしとくね」
茉侑は私に希望を訊ね終えると、爪にジェルネイルを施していく。
副業としてネイルリストをしている茉侑に、私は時折こうして自宅でネイルをしてもらっているのだ。
施術中にお喋りを楽しむのが、ここ最近の私達の定番となっている。
「でもさぁ、異動で良いこともあるかもよ? ほら、出会いのチャンスじゃん!」
「出会い?」
「新しい職場にイケメンがいるかもでしょ? それで恋に落ちちゃったりして!」
「う〜ん。ダメだ、全然想像できないよ」