初恋の続きはトキメキとともに。
学生の頃クラスにいたら、目立つグループの分かりやすい人気者ではないけれど、独特の雰囲気で魅了し密かにモテている一匹狼という感じだ。

広瀬主任が「光」なら、結城くんは「影」と表現するのがぴったりである。

つまり広瀬主任とは違ったタイプの美形だ。

 ……私も高校の時は地味で目立たない生徒だったから、結城くんが漂わせる空気感にはちょっとだけ親しみ感じちゃうんだよね。まぁ私の場合、「影」というより「陰」だったけど。


「あれ? 南雲さん、俺の席に座ってどうしたの?」

そんなどうでもいいことを頭の中で考えていたら、ちょうど「光」の人物が外回りから帰ってきた。

自分の席のすぐ近くに立ったまま、椅子に座る私を不思議そうな顔で見下ろしている。

「あ、広瀬主任、お疲れ様です。すみません、席を占領しちゃって……!」

「それは全然構わないんだけど、何かあった?」

「実は顧客管理システムに不具合が発生して……それで、今見てもらってるところです」

掻い摘んで説明しながら、私は視線を結城くんへと向ける。

それで状況を把握したらしい広瀬主任は「なるほど」と軽く頷いた。

広瀬主任は続いて結城くんに話し掛け、さらに詳しくシステムの不具合について確認した後、再び私の方へ視線を戻した。

「あと数点だけ確認したら一旦情シスのフロアへ引き上げるそうだよ。その間、南雲さんはあっちのテーブルでちょっといい? パソコンなしでできる業務をお願いしたいから」

「あ、はい! 分かりました。メモ用のノートだけ持ったらすぐ行きます……!」

私は急いで自席のデスクからノートを取り出し、先にテーブル席に向かった広瀬主任を小走りで追いかける。


広瀬主任を追いかけることしか頭になかった私は、結城くんがふと目を細めてこちらを見ていたことに、気づかなかった――。
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