初恋の続きはトキメキとともに。
いつも通り必要なことだけを端的に告げると、結城くんはすぐに電話を切った。

私もすぐに受話器を置いて、パッと目の前の高梨さんを見る。

「高梨さん、システム全面復旧だって! もういつも通りに使っていいみたいだよ!」

「えええーっ! ホントですか!? やったぁ〜!」

私達が喜びの声を上げるのとほぼ同時に、パソコンにも上長宛てのメールが転送されてきた。

私と高梨さんはさっそくここ数日溜めていたタスクに張り切って取り掛かる。

また、開催日が近づいてきた展示会の準備にも精を出した。


◇◇◇


「ふぅ〜、さすがに疲れたなぁ」

ポツリとつぶやいた私の声は、しんと静まった室内に思いの外響いた。

ふと腕時計に目を落とせば、時刻はもう22時過ぎ。

誰もいないオフィスを見渡して、私は椅子に座ったままぐーっと背伸びをした。

ずっとパソコンに向かっていたから、肩や首がすごく凝っている。

 ……こんなに遅くまで残業するのは、異動してきてから初めてだなぁ。

基本的に早く帰れていた支社の総務部時代。

とはいえ、入退社が集中する時期などは遅くまで残業することもあった。

本社営業部に来てからは、総務の頃よりも平均的な帰宅時間は遅いものの、今のところまだ夜遅くまでの残業は経験していなかった。

まぁ、展示会直前になれば、この時間までの残業はしばらくの間常態化しそうだから遅かれ早かれではある。

それに今日の残業は意味のあるものだ。

 ……私なんかが広瀬先輩の役に立てるんだもの。すっごく貴重な機会だよね!

実は日中、システムの不具合が解消して業務に励んでいると、外出先の広瀬主任から電話がかかってきた。

競合他社の商品を取り扱っている大手スーパーが、当社に切り替えてくれるかもしれない話が本決まりになったという。

以前から広瀬主任が営業をかけていたそうで、ここに来て動きがあったそうだ。

これは営業として千載一遇のチャンス。

かなりの売上が見込める。

当然、こんな絶好の好機を逃すわけにはいかない。
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