初恋の続きはトキメキとともに。
「やーっと片付け終わりましたね! あとはこの段ボールを本社へ発送する手続きをすればオッケー、っと!」

「あ、高梨さん。それなんだけど、そこにある伝票に記入して段ボールに貼っておけば、あとはホテルの方が発送しておいてくれるみたいだよ」

「そうなんですか! 助かりますね! じゃあそれはわたしがやっておくので、遥香さんは少し休憩してきてください。急遽工場まで行くことになってきっと疲れてますよね? もう残りはこれだけですから、わたしにお任せください!」

来場者が全員帰った後、会場からの撤収作業に励んでいた私は、高梨さんからの有難い申し出を受け入れることにした。

正直なところ、もうクタクタだった。

普段デスクワークだから、外出や立ち仕事に慣れておらず体力がついていかない。

覚束ない足取りで、ふらふらと控え室に戻ると、珍しく広瀬主任もぐったりとした様子で椅子の背にもたれかかっていた。

「……広瀬主任、大丈夫ですか?」

「ああ、うん。ちょっと疲れたかな。そういう南雲さんの方こそ大丈夫? ふらふらに見えるけど」

「気持ちは元気なんですけど、体力がついていかないみたいで。……あ、ご報告ですが、片付けはもう完了しまして、今は高梨さんが荷物の発送対応をしてくれています。それが終われば完全撤収できます」

「そう、ありがとう」


返答しながら、広瀬主任はいつも通りの笑顔を浮かべる。

だけど、そこには隠しきれない疲れが滲んでいた。

新商品サンプルの在庫がないと発覚した時の焦りを帯びた表情といい、今のぐったりと疲れた様子といい、今日はなんだか広瀬主任の珍しい姿が目白押しだ。

スマートで隙のない完璧な姿しか普段目にしないから、ものすごく新鮮だ。

 ……広瀬先輩でもやっぱり焦ったり、疲れたりするんだ。考えてみれば、ごく当たり前のことなんだけど、こんな姿見たことなかったから、なんか意外に思っちゃうなぁ。

決して嫌だとか、幻滅した、とかではない。

むしろ人間味を感じて親近感が湧く。

手の届かない雲の上の人が、まるで急に地上まで降りてきたみたいな感じだ。

そんな錯覚に陥ったからだろうか。

私は無意識のうちに普段なら絶対しない行動に出ていた。

鞄をガサガサと探って、中から取り出した物を自分から広瀬主任に手渡したのである。
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