初恋の続きはトキメキとともに。
彼と出会ったのは、確かに茉侑が私を合コンに連れ出したからだった。

外見を整えることを覚えた私に自信をつけさせようとしてくれたのだ。

彼との破局が酷いものだったため、今も茉侑はそのことを気に病んでいるらしい。

特に私があれ以来恋愛から遠ざかっているから余計になのだろう。

「いつも言ってるけど、茉侑が責任感じる必要なんてないよ。もう昔のことなんだし、茉侑こそもう忘れちゃって。ね?」

「でもさぁ、あれ以来、遥香は彼氏作らなくなっちゃったし、やっぱり引きずってるんでしょ?」

「本当に引きずったりしてないよ。恋愛に前向きになれないのは……別の理由だから」

「それって、やっぱり“初恋の広瀬(ひろせ)先輩”?」

その名前を聞いた瞬間、ドクンと大きく鼓動が跳ねた。

目の前にいるわけでもないのに、名前だけでいまだにこの反応。

もう何年も前のことなのに、と苦い笑みが浮かんでくる。

「その表情……ふぅん、やっぱりね。そうだと思った。遥香が高校生の時に片想いしてた人だよね? 同じ学校の2つ上の先輩だっけ?」

「……うん」

「自分を変えたいってメイク覚えたのも、大学入学をきっかけに初恋から決別しようって思ったからって言ってたもんね」

「茉侑ってば、よく覚えてるね」

「当たり前でしょー! 私は高校から遥香とは別の学校だったし直接は見たことないけど、話を聞いててその広瀬先輩のことすっごく好きだったんだなぁって伝わってきたし。……あ、遥香、ネイル完成! こんな感じでどう?」

確認してみてと茉侑に促され、私は指先に視線を落とす。

お喋りしながらも丁寧に仕上げてくれたネイルは私の希望通りの出来映えだった。

そのことを笑顔で茉侑に伝え、綺麗になったネイルを見つめているうちに、私の脳裏には次第に過去の記憶が蘇ってくる。

思い出すのは、高校生の頃想いを寄せていた初恋の先輩の姿だ。

バスケ部のエースとして汗を流している姿。
体育祭で活躍して注目を集めている姿。
友達と楽しそうに話しながら廊下を歩く姿。
真剣な表情をして図書室で本を読む姿。
裏庭で迷い猫と無邪気に戯れる姿。

まるで映画のワンシーンのように、次々と先輩の笑顔や声とともにその情景が脳裏に浮かんでくる。
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