初恋の続きはトキメキとともに。
#08. 打ち上げの夜
……ううっ、もう部下になって3ヶ月も経つのに、やっぱり目の前にすると緊張しちゃう……!
展示会から3日後の金曜夜。
本社から少し離れた場所にある居酒屋の個室では、営業一課20名による展示会の打ち上げが開催されていた。
無事に大型イベントを終えることができ、さらには昨年以上の商談成功数だったこともあって、みんなのボルテージは最高潮だ。
乾杯して以降、お酒の注文が途切れることはなく、ワイワイと盛り上がっている。
そんな中、なぜ私がこんなにカチコチに身を強張らせているのかというと――直属の上司である井澤課長の前の席に座っているからだ。
「南雲がうちに来て3ヶ月か。どうだ、慣れたか?」
勢いよく生ビールを煽った井澤課長が私に目を向け、問いかけてくる。
声を掛けられ、私は思わずビクッと肩を震わせた。
別に怒られたり、睨まれたりしているわけではない。
ごくごく普通の会話だ。
……だけど、井澤課長の顔ってすごく怖いんだもん。口調も厳しいし、眼光も鋭くて、刺すような視線からつい逃れたくなっちゃうんだよね。
まるで任侠映画に出てくるヤクザの親分に対峙している下っ端の気分である。
外見をそれなりに整えるようになっても、私の性格は地味で冴えない学生時代から変わっていない。
基本的に臆病で引っ込み思案だ。
だから、強面の井澤課長を前にすると、広瀬主任とは違った意味で緊張してしまう。
「は、はい。おかげさまで、ず、随分と慣れてきたと思います!」
「それならいい。展示会でも南雲が上手く立ち回ったと聞いている。これからも頼むぞ」
「あ、ありがとうございます……!」
「秋の展示会を終えた今、次は11月頃から始まる年末商戦、年末前後の来期に向けた商談、さらには年度末の決算を前にした追い込みが待ってる。南雲の働きぶりに期待してるからな」
異動初日の面談時と同様、今回も容赦なくどんどん課題を積み上げられた。
部下を労いつつ、成長を促そうとしてくれているのは分かるが期待が重い。
私は思わず唇の端を引き攣らせた。
……うん、これは飲まなきゃダメなやつだ。
展示会から3日後の金曜夜。
本社から少し離れた場所にある居酒屋の個室では、営業一課20名による展示会の打ち上げが開催されていた。
無事に大型イベントを終えることができ、さらには昨年以上の商談成功数だったこともあって、みんなのボルテージは最高潮だ。
乾杯して以降、お酒の注文が途切れることはなく、ワイワイと盛り上がっている。
そんな中、なぜ私がこんなにカチコチに身を強張らせているのかというと――直属の上司である井澤課長の前の席に座っているからだ。
「南雲がうちに来て3ヶ月か。どうだ、慣れたか?」
勢いよく生ビールを煽った井澤課長が私に目を向け、問いかけてくる。
声を掛けられ、私は思わずビクッと肩を震わせた。
別に怒られたり、睨まれたりしているわけではない。
ごくごく普通の会話だ。
……だけど、井澤課長の顔ってすごく怖いんだもん。口調も厳しいし、眼光も鋭くて、刺すような視線からつい逃れたくなっちゃうんだよね。
まるで任侠映画に出てくるヤクザの親分に対峙している下っ端の気分である。
外見をそれなりに整えるようになっても、私の性格は地味で冴えない学生時代から変わっていない。
基本的に臆病で引っ込み思案だ。
だから、強面の井澤課長を前にすると、広瀬主任とは違った意味で緊張してしまう。
「は、はい。おかげさまで、ず、随分と慣れてきたと思います!」
「それならいい。展示会でも南雲が上手く立ち回ったと聞いている。これからも頼むぞ」
「あ、ありがとうございます……!」
「秋の展示会を終えた今、次は11月頃から始まる年末商戦、年末前後の来期に向けた商談、さらには年度末の決算を前にした追い込みが待ってる。南雲の働きぶりに期待してるからな」
異動初日の面談時と同様、今回も容赦なくどんどん課題を積み上げられた。
部下を労いつつ、成長を促そうとしてくれているのは分かるが期待が重い。
私は思わず唇の端を引き攣らせた。
……うん、これは飲まなきゃダメなやつだ。