初恋の続きはトキメキとともに。
「駅まで送るよ」

「えっ、そんなお気遣い頂かなくても大丈夫です。一人で帰れます……!」

「いいから。南雲さん、結構飲んでたし酔ってるよね? 心配だから」

「でも、広瀬主任の家からだと、こちらの駅は遠回りになりますし……」

「問題ないよ。それとも俺に送られるのは困る? 彼氏から怒られたりする?」

「いいえ、困るとか、そんなことは絶対ないです……! か、彼氏なんていません……!」

「それなら送らせてくれるよね? 行こうか」

あれよあれよと言いくるめられて、気づけば私は広瀬主任と一緒に駅に向かって歩き始めていた。

 ……なに、この展開! わざわざ送ってくれるなんて、広瀬先輩、相変わらず優しすぎです……!

アルコールによる火照りとは違った熱がじわじわと体を侵食していく。

10月でも日中の日差しはまだ強いが、夜はぐっと気温が下がるため夜風は涼しい。

おかげで、ひんやりとした風が吹き抜けるたびに上気した頬を鎮めてくれて助かる。

とはいえ、いくら火照っていると言っても、だんだんと体は冷えてくる。

しばらくすると、私は体をぶるっと震わせた。

「良かったら、これ使って」

そんな私の様子を見兼ねたのか、おもむろに広瀬主任は着ていたジャケットを脱いだ。

そしてなんと、ふわりと私の肩に掛けてくれた。

その一連の動作に、私は目が釘付けになる。

すべてがスローモーションのように目に映り、ハッとした時には広瀬主任のジャケットを羽織っていた。

時が動き出した刹那、微かに香るシトラス系の匂いと、ジャケットに残った温もりに包まれ、私は心臓が爆発しそうになる。

 ……ちょっと待って、これは反則だよ……!

広瀬主任にとっては傘を貸すのと同じように、何気ない気遣いに違いない。

だけど、これは“物を借りる、物を貰う”という行為とは一線を画す威力だった。

一気に酔いが吹っ飛び、心臓が早鐘を打つ。
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