初恋の続きはトキメキとともに。
並んで砂浜に座り、少しずつ海がオレンジ色に染まっていく様子を眺める。

昼間のまばゆい明るさから一転、今はしっとり落ち着いた大人のムードがその場に漂っていた。

「そういえば、遥香はマジックアワーって知ってる?」

「魔法の時間、ですか?」

「直訳するとそうだね。でも俺が言いたいのは夕日に関するマジックアワー。日没前後の約40分間に空が魔法のように美しく染まる時間帯をそう言うらしいよ」  

「そうなんですね。初めて知りました」

「マジックアワーは、空がオレンジ、金色、紫色、紺色へと徐々に変化していく綺麗な景色が見れるらしいよ。たぶん、そろそろかも」

洸くんの言葉通り、ゆっくり海へ沈んでいく夕日が放っていたオレンジ色の光が次第に金色へ、そしてもっと暗い紫色へと移り変わり始めた。

美しい色のグラデーションに目を奪われ、私は食い入るようにその光景を見つめる。

色の変化に伴い、辺りも次第に夜の闇に呑まれて薄暗くなってきた。

隣に座る洸くんの顔にも移り変わる夕日の光が落ちる。

その時ふいに体を抱き寄せられ、私は座ったままの状態で洸くんの胸に寄りかかった。

「やっと遥香を抱きしめることができた」

待ち遠しかったと言わんばかりの吐息混じりのささやきが耳のすぐ近くで聞こえてくる。

ドキッと鼓動が跳ね、急に体が熱くなった。

「俺が運転中は我慢してたって気づいてた?」

「えっ」

「会社の時とは違う無邪気さで目をキラキラさせて海を眺めてる遥香はすごく可愛いし、窓を開ければいい匂いが遥香から漂ってくるし。ずっと遥香に触りたくて仕方なかった」

「ひ、広瀬主任……」

背中に腕を回してギュッと抱きしめられ、私は言葉を詰まらせた。

真っ直ぐな言葉と温かな抱擁に面食らって、瞳が戸惑うように揺れる。

呼び方もつい元に戻ってしまった。

「今のは完璧にアウト。残念だけど罰ゲームだね」

「えっ、ほ、本気ですか……!?」

「もちろん。仕事の時も俺が有言実行なのは知ってるよね? さて、何にしようかな。この状況で遥香が恥ずかしがりそうなこと……キスとか?」

「キ、キス!?」
< 68 / 119 >

この作品をシェア

pagetop