初恋の続きはトキメキとともに。
だけど、先輩はいつも周囲に人が絶えない人気者。

私とは、まるで住む世界が違う。

借りた傘を返すことすらできず、遠くから姿を目で追いかけることしかできなかった。

しかも先輩には同い年の美人な彼女がいて、校内の誰もが認めるお似合いの美男美女カップルだった。

だから私にとって先輩は、絶対に手の届かない一方的に見つめるだけの憧れの人、という存在だった。

 ……それでも廊下ですれ違う度にドキドキしたし、見ているだけで胸がいっぱいで。先輩の姿を目にできた日は幸せだったなぁ。

なにもできなかった恋だけど、本当に本当に大好きだった。

先輩が卒業した後も、その恋心は全く冷めず。

バスケ部のエースだった先輩は、OBとしてたまに高校に顔を出すこともあったりして、結局高校3年間、私は先輩のことをずっと想い続けていた。


「……懐かしいなぁ。広瀬先輩、元気かな?」

「ぼんやりしてると思ったら、初恋の先輩のこと思い出してたの?」

「うん……もう何年も前のことなのにね」

「つまりクソ野郎の元カレじゃなく、初恋を引きずってるってことかぁ。遥香にとってはその先輩が今も特別な存在ってわけね」

「……そうかも。大学の時も初恋を忘れて前に進もうと思って彼と付き合ってみたけど、上手くいかなかったから。だからあれ以来、無理に恋愛するのはやめようって思ってて」

そう、何年経っても先輩は私の心の奥底に棲みついている。

普段は思い出すことはないけれど、ふとした時に初恋の記憶が私を揺さぶるのだ。

初めての彼氏と別れた後、何度かこんな私にアプローチしてくれる男性もいた。

だけど、どうしても関係を進める気になれなかった。
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