幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

 私の返事を聞いた看護師たちは、それぞれ遠慮がちに『よしっ』という顔をした。

 どうやら彼女たちは洸と〝男女の関係〟になりたいようだ。

「それならいいんです。お食事中失礼しました~」

 看護師たちはニコニコしながら自分たちの席へ戻っていく。

 やっと解放された……。

 ホッとして唐揚げを口に入れつつ、私は心の中で彼女たちに語りかけていた。洸を落とすのは簡単じゃないと思うよ、と。

 彼は街中を歩けば誰もが注目するほど眉目秀麗で、すらりとした長身に適度な筋肉がついた抜群のスタイル。大学病院では積極的にオペの経験を積み、評価も上々だったとか。

 その上父親は地域医療の中核を担う総合病院の院長。言ってみれば、御曹司だ。

 だから学生時代からずーっとモテていたし、今だってきっとそうだろう。

 しかし、私の知る限り、洸が恋人を作ったことはない。あまり恋愛に興味がないようで、告白されても断ってばかりなのだ。

 お節介だろうけれど『もったいない!』と言いたくなる。

 洸と違って、私はまったく男性に縁がない人生を送ってきたから……。

 彼のモテエピソードを思い出していたら、逆に自分の孤独が浮き彫りになって落ち込む。

 仕事は好きだしもっと高みを目指すつもりだけれど、できることならプライベートも充実させたい。

 出会いってどこに落ちてるんだろう……。

 思わずこぼれそうになったため息を押し戻すように、ご飯を頬張った。

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