幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

「じゃ、洸先生で決まりね。来週から一緒に仕事できるの楽しみにしてる」
「ああ。それじゃ、また」

 手を振って彼を見送ったものの、洸の方はにこりとも笑わずに食堂を去って行った。

 大人になってからの彼は相変わらずクールだなぁ。とりあえず結婚の話が出なくてよかったけど……。

「雪村先生!」

 食事を再開しようとテーブルに向き直った瞬間、先ほど洸の噂話をしていた女性看護師たちが、私を取り囲むように群がってきた。

「な、なんでしょう……?」
「さっきの男の人って、来週から心臓血管外科に来る院長の息子さんですよね!? お知り合いなんですか!?」

 代表で質問してきた看護師の脇で、他のふたりも目をギラギラさせている。鼻息も荒めで、ちょっと怖い。

「知り合い……というか、腐れ縁ってやつかな。実家が近所で」
「では、男女の関係ではないと?」

 ますます顔を近づけてくる彼女をなだめるように、微笑みを浮かべてこくこくと頷く。

「も、もちろん。大切な友人ではあるけど」

 本当はつい最近結婚しようかと持ち掛けられたばかりだが、さすがに本気ではない……はず。

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