幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「……別に。俺は自分の意思でここにいる。兄貴の代わりになろうと思ったわけじゃない」
洸にしては珍しく、言葉に棘がある。というか、さっきからすこぶる機嫌が悪そうだ。
「そうか。お前、見ない間にずいぶん大人になったじゃないか」
「そりゃそうだろ。兄貴がそんなオッサンになってるんだから」
「手厳しいな。アメリカでは若く見えるって言われてたんだけど」
……なんか、洸らしくない。どうして冷たい言葉ばかり吐くのだろう。逆に章くんの方は、人を寄せ付けないクールな雰囲気が抜けて、穏やかな印象になっている。
「おいおい、久々の再開だってのに兄弟喧嘩しないでくれ。ほら、飯でも行こう。よかったら美葉ちゃんも一緒に」
見かねた院長が仲裁するようにふたりの会話を中断させ、私に笑いかけてくれる。
「はい。ぜひご一緒させてくださ――」
「悪いけど、俺たちもう店を予約してるんだ。飯ならふたりで行ってくれ」
洸はそう言うと私の手を取り、強引に引っ張りながら院長たちの脇をすり抜ける。
私たちは別に、お店の予約なんかしていない。家で食べるか外食にするかだって決まっていなかったのに、どうしてそんな嘘を?