幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

「ちょっと洸……どうしたの? すみません、お先に失礼します」

 去り際に院長と章くんにぺこりと頭を下げたけれど、洸についていくのが精いっぱいでふたりがどんな顔をしているのかまでは見られなかった。

 結局、洸に手を引かれて到着したのは自宅のマンションだった。道中私がなにを聞いても返事はなく、洸が不機嫌であることは明らかだ。

 廊下に上がったところでようやく手を解放してくれたので、刺々しいオーラを纏う洸の背中に思わず問いかける。

「ねえ、本当にどうしたの? 洸だって章くんとは久しぶりだったんでしょ? なのにどうしてあんな態度……」
「美葉」

 洸が、首だけを動かして微妙にこちらを向いた。それでも目を合わせてくれる気配はなく、伏し目がちな彼の長い睫毛が、頬に影を落としている。

「うん……なに?」
「友情結婚でも……浮気はご法度、だよな?」
「浮気? どうして急にそんな話?」

 私にそんな大それたことできるはずがない。そもそも男性に縁がなさすぎるから、洸が幼なじみのよしみで結婚してくれたのだ。

 そんな彼を裏切るようなことをしたら、私は自分で自分が許せないだろう。

 ……洸の方こそなにかあるんじゃ?

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