幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
なんだ? せっかく心を鎮めていたのに、騒々しい……。
怪訝に思い顔を上げると、オペナースの小森さんがいた。その目は吊り上がっていて、明らかに怒っているようだった。
「洸先生、聞いてください!」
「……あまり大きな声を出さないでくれ。なんだ?」
手を止めて、彼女の話を聞く。看護師が血相を変えてやってくる時は患者の急変など一刻を争う状況の場合もあるので、念のためすぐに出られる心構えだけしておく。
小森さんは室内の人目をキョロキョロ気にした後、ずいっと俺の顔を寄せてきた。
「雪村先生、浮気してます」
小声で囁かれた言葉に、胸が騒ぐ。顔には出さないようにしたいところだが、眉がぴくっと震えてしまった。
……美葉に限って浮気なんてあり得ない。心を乱されたら負けだ。
「根拠もなく変なことを言わないでくれ」
「根拠ならありますっ。この目で見ましたから」
「……なにを見たって?」
「屋上で、雪村先生と章先生が仲良くランチしているところですよ! たぶん今も一緒にいるんじゃないかなぁ」
ぶわっと全身の毛が逆立つ感覚がした。