幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

 高比良総合病院の屋上庭園は日当たりがよく、手入れされた植栽も綺麗で患者やスタッフからの評判も上々。俺もあの場所で休憩したり食事をとったりするのが好きだ。診療科を問わず、医師と顔を合わせるのもしばしばだ。

 つまり、ふたりはたまたま屋上に居合わせて、食事をしただけ。そうに決まっている。

 それに、兄貴と美葉だって幼なじみなのだから、普通の同僚よりも親しげに見えるのは当然。俺たちの間柄をよく知らない小森さんが、その様子を勝手に親密な男女の関係だと誤解したのだろう。

「章先生は、雪村先生にとって義理の兄だ。同じ職場で一緒にランチすることくらいあるだろう」

 小森さんに、というより自分に言い聞かせていた。こうして彼女に目撃されていることから考えても、ふたりがコソコソしているわけではないのは明らかだ。よって、後ろめたい関係ではない。

 ……よし、段々平常心が戻ってきた。

「でも雪村先生、病院じゃ聞いたことない甘ったるーい声で『お義兄様~』だなんて呼んでたんですよ。案外、章先生の方が本命だったりして」

 お、おに……おにいさま? なんだそれ、聞いてないぞ。

 美葉はいつも兄を『章くん』と呼んでいたはずで、『洸』と呼ばれている俺の方が一歩リードしているような、そんな気でいたのに。

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