幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
俺はふらりと立ち上がり、無言で屋上を後にする。階段を下りる気力がなかったため、行きとは違いエレベーターを使った。
……それにしても、美葉は具体的にいったいなにが不安なのだろう。
恋愛感情や肉体関係のない友情結婚。その条件で俺と結婚したのに、時々約束を破るような言動をするからだろうか。だとしたら完全に非があるのは俺だ。
どうすれば美葉を安心させ、夫としての評価を挽回することができるのか。
答えがまったく分からないまま、俺は考えることから逃げるように仕事に戻った。
「洸、ただいまー。寝てるの?」
その日の夜、八時頃。帰宅した美葉が、俺の部屋をノックして呼びかける。
俺は彼女より先に帰っていたので、なにか美葉の好きな料理でも作って待っていようかと最初は思った。
しかし、美葉が喜んでくれるとは限らない。万が一『料理で誤魔化そうとしているなんて』と思われたら、余計に溝が深まりそうだ。
あれこれ考えていたら体が思うように動かず、結局家事をなにもせず自室にこもり、ベッドでふとんにくるまっていた。
美葉の理想とは程遠い、いじけた子どものように。