幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「入っていい?」
部屋の外で遠慮がちに美葉が言い、返事に迷っているうちに、ドアが開く音がした。
ドアに背を向けるようにして寝ていた俺だが、観念したように寝返りを打つ。美葉が壁のスイッチで部屋の明かりをつけ、ベッドに近づいてきた。
目が合うと、ふわりと微笑んでくれる。
「おにぎり買ってきたの。食べない? イクラのやつもあるよ」
そう言って、手に提げた袋を揺らす。まるで、俺が食事を用意できない状態だと見越していたかのようだ。
しかも、俺の好物までちゃんと買ってきてくれるなんて。
幼い頃と変わらず、結局美葉に庇護されている立場が不甲斐ない。
「……食べる。けど、後にするから、美葉は先に食べてて」
「そっか、わかった。……あのさ、昼間章くんが言ってたことだけど」
美葉がベッドのそばに跪き、枕元で話し始める。ぎくりとして、思わず体が強張る。
しかし、さすがに耳を塞ぐわけにはいかないので、緊張しながら彼女が言葉を継ぐのを待った。
「不安って別にネガティブな意味じゃなくて、初めてのことに戸惑ってるだけなの。私たち幼なじみだし、友情結婚だし、こう、爽やかな夫婦を目指していたわけじゃない? なのにさ……洸と暮らしてると結構ドキドキする機会が多いものだから、あれ? おかしくない? って自問自答してるっていうか」