幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
はにかみながら話す美葉は、時折手のひらを頬に当てていた。赤くなってしまうのをなんとか誤魔化そうとしているような、焦った仕草。胸がきゅっと締めつけられる。
それに俺の聞き間違いでなければ、今彼女は、『ドキドキする』と言った。俺との結婚生活の中で、心境に変化が訪れたということなのか?
俺はベッドから上半身を起こし、彼女と目を合わせる。美葉の瞳は切なげに濡れていて、これまで見てきたどんな彼女の表情より、綺麗だった。
「で、でも。美葉の好みは、兄貴みたいな男なんじゃ……?」
「なんで章くんが出てくるの?」
なんでって、それは美葉が昔『タイプだ』と断言していたからだ。そう言えたらいいのだが、彼女が友達としていた会話を盗み聞きしていた後ろめたさもあり、言葉に詰まる。
「……ごめん」
「洸はやっぱり、そういう感情を持たれるのは迷惑かな……? それだけ、聞いておかなきゃと思って――」
「迷惑なわけないだろ」
被せ気味に断言すると同時に、伸ばした両手で美葉の顔を引き寄せ、俺は衝動的に唇を合わせていた。想いが溢れて我慢がきかなかった。
夢にまで見た美葉との初めてのキス。
甘くて、甘すぎて、頭が馬鹿になりそうだ。