幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
今は一時的に離れて暮らしているので当たり前だが、美葉の話には俺が登場しない。
にもかかわらずそこには俺の気配があって、まだ短い結婚生活の中でも、着実に俺たち夫婦の信頼関係は積み上がっていたんだなと思わされ、彼女に対する愛おしさが増す。
今も昔も、一緒にいても、離れていても、俺の心に美葉以外が入る余地はないのだ。
今回の修行で、俺はそれを強く痛感している。
「洸先生、最近家に帰ってないらしいって他の先生方が噂してましたけど……なにかあったんですか?」
ひとつ大きなオペを終え、スクラブ姿で通路を歩いていた時。不本意ながら声だけで誰か判別できるほどに俺をげんなりさせる存在、小森さんが駆け寄ってきて、俺の隣に並んだ。
同じオペに入っていたわけではないので、たまたま俺の姿を見つけて慌てて追いかけてきたようだ。
毎回冷たくあしらっているのに、まだ懲りないのだろうか。
「俺と妻の不仲を期待しているなら、答えは否だ」
「じゃあなんで家に帰らないんですか?」
「きみには関係ない」
「ありますよ……!」
小森さんがやけにムキになってこえを張り上げた。怪訝に思って彼女を見つめると、なぜか怖い顔で睨まれる。
「私、ファンとかじゃなく本気で――」