幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家

「その〝本当のお前〟を美葉は嫌ってるわけ?」
「まさか。美葉はそんなに薄情じゃない。たまにうっかりそっちの俺が出てしまった時も、美葉は昔みたいに優しく接してくれる」
「じゃあなんの問題もないじゃないか」
「あるさ。俺はこの耳で聞いたんだ。俺のことは弟みたいな存在で、好みのタイプは兄貴みたいな大人っぽい男だって、美葉が友達に話しているのを」

 そう。俺が本当の自分をこうまで押し隠し、クールな男になろうと思ったのは、あの一件が原因だ。本人の口から出た言葉なので、疑いようもない。

「……ちなみにそれ、いつの話?」
「高三の時」

 間髪を容れずに答えると、グラスを傾けていた兄がゲホッと咳込んだ。紙ナプキンで口元を押さえ、信じられないような目をして俺を見る。

「古っ。ちょっと待て。高三って……十何年も前の話じゃないか」
「人の気持ちはそう簡単に変わらないだろ。現に俺は、物心ついた時から美葉ひと筋だ」
「いや、それはお前の一途さの方がレアというか、普通は年齢とか環境の変化と共に、好みのタイプも変わってくるだろ」
「えっ」

 好みのタイプが、変わる……? そんなパターンは考えもしなかった。

 絶句して固まる俺を見て、兄が苦笑する。

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