幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
「だいたい、一生続く結婚生活の中で自分を偽り続けるなんて、無理な話だ。別に修行なんて回りくどいことしないで、美葉に全力の愛をぶつければいいじゃないか。彼女だってそっちの方がきっと喜ぶ」
兄らしいおおらかな笑みを向けられ、思わず心の中で『にいちゃん……』と呟く。
実は、カッコつけて兄貴などと呼び始めたのは、美葉を呼び捨てにするようになったのと同時期。嫉妬で曇った目には憎いライバルにしか映らなかったが、本来の俺は兄を慕っているのだ。
こんなに親身になって俺と美葉のことを心配してくれている兄に、これまでずいぶんひどい態度を取ってしまった。
「ごめん、兄貴。今まで冷たく当たって……引越しの手伝いもすっぽかして」
俺は思わず膝に手をつき、兄に深々と頭を下げた。兄はクスクス笑って、俺の肩をポンポンと叩く。
「そう、それそれ。悪いと思ったら謝れる、愛する人にはちゃんと目を見てその気持ちを言える。それこそお前のよさだよ、洸」
「兄貴……」
急に視界が開けたような感覚がした。
昔の美葉の発言をきっかけに、自分の気持ちをありのままさらけ出さないことを美徳としてきたが、正直、苦しい時もあった。
美葉の理想に近づこうと思うばかりに、本当の自分を抑えていたせいだろう。