幼なじみドクターはクールなふりして愛妻家
今でさえこれなのだから、この先何十年と結婚生活を続けていくうちに化けの皮が剥がれてしまうのは避けられない。
だったら、美葉をがっかりさせる前に自分から本当の姿を見せるべきだ。
「俺……美葉の前で無理をするのはもうやめる」
手元のグラスを見つめ、自分で自分の意思を確かめるように呟く。
隣の兄は、俺の決意表明に静かに耳を傾けてくれていた。
「でも、だからって頼りなかった昔の自分に戻るつもりはない。ありのままの俺で美葉を愛し、この手で守っていく。それが俺の目指すべき理想の姿だ」
今までは、表面的なイメージに囚われすぎていた。常に冷静で寡黙、少々のことでは動じない。そんな男こそクールに違いないと、勝手に決めてつけていた。
しかし、その凝り固まった考えが美葉を不安にさせ、自分さえ苦しめていたのだ。そんな理想を追い求めていてもきっといいことはない。
「よし。考えが固まったんなら、さっさと美葉の待つ家に戻れよ。修行は終わりだ」
発破をかけるように、兄が俺の背中をバシッと叩く。応援してもらえてありがたいが、残念ながら今夜、美葉は家を空けている。